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「犬にワンと吠えられるアトムが描きたかった」
黒田はある時、親交のあった作家・野坂昭如氏に「富士山」についてどう思うかと尋ねたところ、意外な答えが返ってきました。「いつもみんなから期待されていて、気の毒だ」と。「日本一の山」として期待され続ける富士山に、同情を寄せる野坂氏の言葉を聞いた黒田は、アトムに対する自分の考えを重ね合わせます。常に強いヒーローとして活躍を求められるアトムは、野坂氏がいうところの「富士山」のように、気の毒で、かわいそうな存在でもあると……。
「強いだけのアトムじゃ面白くない。犬にワンと吠えられるアトムが描きたかった」。
「18歳のアトム」では、アトムがいろいろな表情をみせます。笑った顔、怒った顔、勇ましい顔、悲しい顔、情けない顔……。敵と戦うロボットではなく、18歳の青年として生きると決めたアトムは、わたしたちと同じように複雑なこころを持っているのです。
「自然に還るアトム」
「18歳のアトム」では、太陽や道端の雑草と語り合うアトムや、花や鳥になったアトムが描かれます。原子の力で動くアトムが、自然と調和し、融合してゆくことで、黒田はテクノロジー一辺倒に陥らず、人類が自然と共存・共生する世界の美しさを描いているようです。
昭和の高度経済成長期から平成、令和へと時を重ね、さまざまな問題が顕在化し、自然の猛威に恐怖する現在。苦悩する18歳のアトムの姿が、わたしたちに多くのことを問いかけます。